自主管理マンションとは?管理組合との関係とメリット・デメリットを解説

分譲マンションの中には自主管理マンションと呼ばれる形態のマンションが存在します。

本記事では 自主管理マンションの基本知識から自主管理マンションのメリット・デメリットや不動産取引における自主管理マンションについて解説します。

自主管理マンションに買いたい・売りたいと思っている方はぜひこの記事を読んでください!

この記事でわかること
  • そもそも自主管理マンションって何?
  • なぜ自主管理マンションが存在するの?
  • 自主管理マンションのメリット・デメリットは?
図解つきで解説します!

本記事内で記載されているデータや数字は国土交通省が公表しているⅡ.平成30年度マンション総合調査結果をもと記載しています。

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自主管理マンションに関係する”管理組合”を理解しよう

自主管理マンションの前に、まずは管理組合を理解する必要があります。

管理組合とは、分譲マンションを購入した人全員(区分所有者)で構成される管理団体です。

管理組合は”区分所有法”(正式名称:建物の区分所有等に関する法律)によって定められており、マンションの修繕や管理規約の作成・設備メンテナンスなど、マンションを守ることを目的としています。

マンション博士

マンションは区分所有者(オーナー)の共有財産だからみんなで守ろうね。ということです!

「マンション標準管理規約35条」では、区分所有者の中から、「理事長」「副理事長」「会計担当理事」「監事」を選任し、役員として定める必要があると規定されています。

自主管理マンションの特徴
主な役員業務内容
理事長マンションの管理組合を代表者。すべての業務を統括
副理事長理事長の補佐や理事長不在時の代行を行う。
会計担当理事管理費等の収納、保管、運用、支出などの会計業務
監事組合の業務の執行や財産状況を監査し、結果を総会に報告。
業務の執行や財産状況について不正があると認められるときは臨時総会を招集できる
※役員の人選は「推薦」「互選」「順番制」などによって決定します。(マンションによって異なる)

管理組合の役員は一般的に2年とされています。

ただし管理組合の任期は法的に定められているものではなく、各マンションの管理規約の中で定められている期間が満了したら次の役員を選出することになります。

POINT
  • 管理組合とは、区分所有者で構成されるマンションの管理団体
  • 管理組合は区分所有者全員で構成される
  • 区分所有者の中から選出された人が理事会として活動する

【本題】自主管理マンションとは?

各マンションの管理組合では、以下3つの選択肢から”どのようにマンションを管理するのか”を決定します。

  1. 管理業務全般をマンション管理会社に委託(全部委託)
  2. 管理業務の一部を管理会社に委託する(一部委託)
  3. すべての管理業務を住民たちで行う

多くのマンションでは外部の管理会社に委託するのですが、「自分たちで管理業務をすべて行う」としているのが自主管理マンションです。

自主管理マンションとは?

マンション標準管理規約が定める管理業務は15項目

国土交通省のガイドライン「標準管理規約」には、マンション管理組合の業務には15項目が定義されています。

  • 管理組合が管理する敷地及び共用部分等の保安、保全、保守、清掃、消毒及びごみ処理
  • 組合管理部分の修繕
  • 長期修繕計画の作成又は変更に関する業務及び長期修繕計画書の管理
  • 建替え等に係る合意形成に必要となる事項の調査に関する業務
  • 適正化法第103条に定める、宅地建物取引業者から交付を受けた設計図書の管理
  • 修繕等の履歴情報の整理及び管理等
  • 共用部分等に係る火災保険、地震保険その他の損害保険に関する業務
  • 区分所有者が管理する専用使用部分について管理組合が行うことが適当であると認められる管理行為
  • 敷地及び共用部分等の変更及び運営
  • 修繕積立金の運用
  • 官公署、町内会等との渉外業務
  • マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務
  • 広報及び連絡業務
  • 管理組合の消滅時における残余財産の清算
  • その他建物並びにその敷地及び附属施設の管理に関する業務
マンション標準管理規約(単棟型)第2節 管理組合の業務|国土交通省

▼難しい言葉をかみ砕くと・・

理事会・総会/予算の執行/総会議案の決定/清掃業務/管理員の業務/長期修繕計画書作成/管理運営業務/会計業務/出納業務

マンション博士

こうした管理業務を居住者が主体となって行うのが、自主管理マンションです。

「外部の人に任せる」判断をするのも自主管理マンションの特徴

自主管理マンションは居住者が主体となってマンション管理を行うと紹介いたしましたが、実際のところすべてを居住者で行っているマンションは少ないが現状です。

建築や管理の知識は外部のアドバイザーを採用したり、会計業務は税理士に依頼したりなど。こうした「必要な部分だけを外部に委託する」と判断することができるのも自主管理マンションの特徴と言えます。

マンション博士

清掃業務自体を外部委託している自主管理マンションもたくさんあります!

自主管理マンションの最大のメリットは管理コストの安さ

自主管理マンションの最大のメリットはなんといっても管理コストの安さです。

一般的な分譲マンションの場合、物件代金や固定資産税などの税金以外に、管理費・修繕費を毎月委託している管理会社に支払います。自主管理のマンションは管理委託費用が発生しないので、月々の支払いをガツンと下げることができます。

国土交通省の調査によると、全国にあるマンションの管理費の平均は15,956円。

自主管理マンションの場合、5,000円以下の管理費で収まることも少なくありません。

管理費の比較イメージ
管理委託しているマンション
15,956円
自主管理マンション
5,000円以下

35年ローンと仮定した場合、管理費だけでも生涯支出に大きな差が付きます。

生涯管理費
※35年ローンと仮定
管理委託しているマンション6,701,520円
自主管理マンション2,100,00円
差額4,60,1520
算出方法:月々の管理費×12カ月×35年

確かにこれはとても大きなメリットですね♪

マンション博士

自主管理マンションの中には月々の管理費が1,000円以下と自主管理マンションもあるようなので、長い目で見ると数百万単位で支払い額が変わってきます!

下記の記事で管理委託マンションと自主管理マンションの詳細なコストを比較しています。

自主管理マンションのデメリット

自主管理マンションのデメリット

居住者主体の管理のため、管理の質が低くなりやすい

自主管理マンションは専門的知識を有していない居住が主体となって管理することになるため、管理の質が低くなりやすい傾向があります。

「マンションは管理を買え」という言葉があるように、マンションにおける管理体制は非常に大切です。

マンションの管理業務はただ清掃すればよいものではありません。建物の点検・メンテナンス、修繕積立金の管理など専門性の高い業務も数多く存在します。

管理委託をしていればマンション管理の専門知識を有した管理会社が対応してくれますが、自主管理マンションの場合はすべて居住者が主体となって管理する必要があります。

参考情報

マンション管理について、外部の専門家(マンション管理士)に相談したり、各自治体が専門家を派遣するサービスもあります。こうした外部のサービスを活用しながら、自分たちだけでうまく管理していくことが多いようです。

マンション博士

東京都ではマンションアドバイザーの無料派遣という制度がありますね!

理事会の方針で管理形態が変わる可能性がある。

先述した通り、管理組合の役員には任期があります。(一般的には2年)同じ人がずっと理事をやるわけではないため、途中で方針が変わってしまうケースも存在します。

一番大きく影響を受ける部分として、長期修繕計画があげられます。何十年先を見据えた修繕計画が、理事の方針でガラっと変更されると、計画が狂ってしまう可能性もあります。

理事会の裁量や権限もマンション管理規約で定めることが多いので、しっかりと管理規約を確認する必要があるでしょう

マンション博士

最近は聞かなくなりましたが、マンション理事長の管理費使い込みがあった事例もありますね。

住宅ローンが組みづらい可能性も・・

自主管理のマンションは不動産取引において、特に住宅ローンと価格に対して影響を与えます。

自主管理マンションは金融機関からの評価が低いため、住宅ローンの審査が通らないことが懸念されます。

自主管理であることは不動産売買契約時の重要事項説明に盛り込まれるため、重要事項説明書を提出すれば金融機関に伝わります。

金融機関としては自主管理が成功していたとしても、それを確認する方法はありません。

また、将来的に自主管理が破綻してしまう可能性も否定できないでしょう。 その結果、住宅ローンの審査に影響が出ることも考えられます。

自主管理マンションのメリット・デメリットともいえる部分

マンション価格が相場より安くなる

自主管理マンションは管理会社に委託しているマンションに比べて価格が安くなる傾向にあります。

価格が安くなりやすい理由

  • マンション管理への不安
  • 住宅ローンの組みづらさ
  • 自主管理の負担はどの程度か

自主管理でマンション管理が上手くいっていたとしても、購入者にはそれを確認する方法がありません。

買主が感じるこれらの懸念や不安を完全になくすことは難しいために、マンション価格に反映されてしまいます。

ただし購入者目線で見ると、「安く購入できる」といったメリットにもなり得ます。

購入を検討する際には、”管理体制”や”必要書類を出してもらえるか”などをしっかり見極めると、相場より安い価格で分譲マンションを購入することができます。

住人同士の繋がりが強い

自主管理マンションはその性質上、居住者同士の繋がりが大きいことが特徴です。

自主管理マンションは、「共有財産をみんなで管理して守ろう!」という意識が強いため、必然的に居住者同士のコミュニケーションが活発です。

そのため困りごとがあった際には、互助の精神で協力しあえるのは大きなメリットとも言えますが、一方で、そうした人間関係を望まない居住者もいますし、距離が近い分、人間関係に悩むこともあるでしょう。

確かに良い面とも言えるし、悪い面でもありますね・・

【豆知識】自主管理マンションを選択する管理組合が増えている?

自主管理マンションはまだ管理を委託するという概念がなかった昭和40年代~昭和後半に建築された、いわゆる高経年マンションに多く見られています。

しかし国土交通省が発表している「マンションに関する統計・データ等」を見ると、近年、自主管理マンションが増加傾向にあります。

下記データは平成20年から平成30年まで、5年ごとのデータが掲載されていて、自主管理マンションの割合は以下のように推移しています。

平成20年度平成25年度平成30年度
全てを管理会社に委託74.9%72.9%74.1%
基幹事務の一部を
管理会社などに委託
13.8%12.8%11.1%
基幹事務全て、
または管理事務全てを管理組合で実施
6.78.59

(最新データは国土交通省・平成30年度マンション総合調査結果[データ編]「2.管理組合向け調査の結果 P.288」参照

マンション博士

当サイト独自の集計によると、2022年の自主管理マンションの比率は8.15%でした!(詳細は下記のページをご覧ください。)

物価高で管理費の値上げ要求が増えていることが背景に

自主管理マンションが増えている背景には近年の物価高に起因して管理コストが上昇し、管理会社からの値上げ要求があります。

しかし、管理会社が管理費の値上げ要求をしても、住民側が受け入れず契約を終了するケースが発生しているのです。

また、マンション住民の高齢化やマンションの老朽化が重なることも管理会社の負担増につながっています。 これらの要因により管理会社が管理を撤退し、自主管理マンションが増加しています。

自主管理マンションの購入を検討している方は事前確認でしっかり見極めよう

自主管理マンションの購入を検討している方は事前確認でしっかり見極めよう

自己管理マンションの購入を検討しているならば、契約前の管理体制の確認が重要です。

売主からすれば、しっかりと管理できている旨を買主に伝える必要があります。 双方にとってプラスにするためには「重要事項調査報告書」の作成をおすすめします。

「重要事項調査報告書」とは管理費や修繕積立金の改定予定や大規模修繕計画の見通し、耐震診断の有無など建物全体に関する重要項目が記載されている書類です。

一般的にはマンション管理会社が発行するものですが、管理組合でしっかりとした書類が発行できれば買い手からの信頼も得やすいでしょう。

まとめ

自主管理マンションは居住者でマンション運営を行う分譲マンションです。

メリットとデメリットをまとめると以下の通り。

メリットデメリット
管理費が圧倒的に安い管理の質が低くなりやすい
理事会の方針で管理体制が変わる可能性がある
住宅ローンが組みにくい

また居住者同士の繋がりが強いのも自主管理マンションの特徴です。

自主管理マンションはデメリットが多いように見えますが、どこまでいっても管理組合がしっかり機能しているかに尽きます。

しっかりと機能している自主管理マンションであれば、管理費も安く、住みやすいマンションと言えるでしょう。

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